ウェットな侍

何かを鑑賞した後、周りが面白かったと絶賛。
でも、自分はいまいち面白くなくて、言い辛いってことあると思うんです。
逆のパターンもあると思います。


私自身は、遠慮して言わなかったり、言葉を控えめに言ったりします。
それが悪いとは思いません。人間関係はとても複雑だし、他人を大事にしたい気持ちは良いと思うのです。
ただ、自分の言いたい気持ちが、残ってモヤモヤすることはありますし、ちょっと後悔することもあります。
なんでしょうね、あの言いたい気持ちは。


でも個人的には面白いとか、面白くないって、本当はどうでもよい話だと思ってます…っていうと語弊がありますが、ただ面白い、面白くないは本当にその時の個人的な主観でしかないと思うのです。
鑑賞は当の本人に、何の意味が生まれるかで十分価値があります。
その意味も、観る人の経験や好み、何かしらの不幸や、体調不良、時には座席の隣の人の言動にも左右されてしまうほど、揺らぎやすいものです。


言ってみれば当たり前のことなのですが、いざ感想を口に出す時、言う側も、聞く側も、言われる側も、その意識ではなくなるように思います。


そこが問題だと思うのですが、それも当然だと思うのです。
ややこしくてすいません(笑)


自分が感想を言うときは、どうでもよい個人的主観であっても、一生懸命に観て、感じて、考えたことを言いたくなります。
自身が何かしらを得たいのでそうなっちゃいます。
そうなると普通は、言われた方や聞く側も、どうでもいいって感じではなくなってしまいます。
「そんなの一意見なんだから、軽く流しときゃいいんだよ。」
っていうドライな意見もあると思いますし、そうじゃなきゃやってられないのですが、私はウェットで感傷的な日本人気質も良いなーと思うのです。
軽く流される方になったとき、ちょっと悲しいので。


ただ、私自身どうも現状対応の仕方ではちょっとモヤモヤするのです。
そんな時、凄くいいなーと思った言葉がありまして。


「恐れながら申し上げます」
です。


凄くいいなーと思うんです。
この言葉は相手の立場と敬意、自身の立場にさっと線を引いてはっきりさせますし、しかも清々しい堂々とした感じです(勿論、言い方はありますが)。
感動的な時代劇だと、忠誠あふれる家臣と、名君のお殿さまが、お互いの様々なことをくんだ上で、涙堪えて、決定を下しますよね。
以前は、まわりくどい、へりくだった言葉にしか思ってなかったのですが、ああいった身分社会で生まれた、文化的にウェットな言葉だと思えてきました。


「恐れながら申し上げます」…現代ではまんま使えなさそうですが(笑)
あの清々しさと、お互いを想う気持ちは活かしていきたいです。

思考は引っ越ししきらず

すっかり更新が…。
なにはともあれ今年もあと僅かです!まだ年内、やる事一杯ですが…(笑)


しかし、やる事の1つだった引っ越しをして、部屋の整理も本日終えました。
岡山の大学に入学した時が人生初の引っ越しで、それから東京に来てから5回目の引っ越し。
一番近い姉とも10歳離れた末っ子の私は自分の部屋が無く、部屋にこだわりがありませんでした。
岡山に住んでいた頃、遊びにきた留学生の友達に「何もなーい、可哀相…何か買ってあげようか?(棚とか家具)」と言われた私。
そんな私も5回目にして、ようやっとまともな?部屋作りが出来るようになりました。
今回のお気に入りは、自作の長さ180cm仕事机です。
無印かっていう感じの素朴さとシンプルさですけど。


最近、よくお店の家具を見詰めてしまうのですが、何も置かれていない机や椅子って綺麗だなーと思います。
今回の机も何も置いていないのが一番美しい。
PCとか置いていくと美しさが半減していく、ああ無念残念…そういう使い方が前提で作ってるのに(笑)


で、新居は中野に変わりましたが、以前も中野の住人だったので勝手知ったる街です。
出先からマイホームの駅に帰ったときの、どこか気の緩む、馴染んだ感覚ってあると思うのですが、今回は最初からそんな感じです。
今日も帰りの電車の中で、中野に着いたらどこに寄って何を済まして帰ろうかと思案していて、ふと本屋が浮かびました。


でもそれは引っ越す前の三鷹の本屋です。
ああ、違う違う。と改めて…浮かんできたのは三鷹駅を挟んで反対側の本屋です。
おお、違うよ違う。と考えますが、また三鷹の本屋です。
どうやっても三鷹の風景です。
あらら?と思いますが、まだ三鷹です。
これは思考の経路が良くないかもと思い、まずは中野駅の改札何口を出て…とその風景が三鷹です。
もはや何故か、それに対して出口が違うよと思い、三鷹の反対側の出口を思いだそうとします。
どこかうっすら中野の本屋が思い出せないぞと意識があるのに、同時に三鷹の反対側の出口を懸命に思い浮かべようとして、困惑ぎみに駅に着きました。
勿論、三鷹にいるとは思っていないし、実際の風景から本屋は分かるのですが、しばし体は中野感覚、頭は三鷹感覚という不思議なズレがありました。
どうも思考は、まだ引っ越しが終わってないようです。

手帳と万年筆(後半)

で、カキモリさんに着きました。
キモリさんはこだわる人にはとても快適なお店だと思います。
万年筆は高価なモノまで、様々な種類の紙に試し書きができます。
ということで、並んでる端から端まで試し書き(笑)


実は一つだけ候補があって来たのですが、いやー、やっぱり良いモノは色々ありますね。
当たり前ですけど、ちゃんと誠意のこもったモノが世の中にはあって、それは幸せな事だなーとつくづく感じ入ってしまいました。


かなり悩みまして、最終的に2本が候補に残りました。
一つはあらかじめ候補だった万年筆で、凄く滑らかで書きやすいものでした。
以前に他の店で試し書きをして、まるでペンが自分の意思より先に字を書いてくれるような、ちょっと不思議な気持ち良さが凄く印象的でした。
それは今回も変わりません。
凄い。


もう一つは立てて書くとかなり細字で、ぐっとねかせて書くと筆ペンぐらい太く書ける個性的な万年筆です。
書く感触はちょっと癖があって、自分の感覚より若干ひっかかって線が引ける印象でした。
でも手帳に様々なラインが引ける楽しさは、とても魅力的です。
それに、ひっかかり等の癖は自分の修練でなんとかなるような気もしますし、そういうじゃじゃ馬はやっぱり好きなんです(笑)。


面白いのは普段の自分なら、多分後者の個性的なペンを選ぶはずなんです。
ただ、なんとなく体のどこかにひっかかるものがあって、かなり迷ってました。
長く使いたいなら書きやすいものですが、個性的なものを長く使ってこなせるというのも非常に魅力的です。
ぼんやりとですが今回は滑らかな書きやすいもの、とささやきを感じたので、その方向に決めました。


するといつも親しくさせていただいているスタッフさんが違うお勧めの万年筆を紹介してくれました。
それは価格も手頃なのに非常に書きやすいものでした。


私がカキモリさんを好きな理由はもう一つあって、スタッフさんが個人対個人で接客してくれることなんです。
勿論、色々な接客があっていいと思いますし、正解なんかなくていいと思いますが…ちょっとややこしいんですが、正解がないってことがいいと思うんです。


というのは、一旦私はそのスタッフさんが進めてくれたペンを買うことに決めました。
商品を準備してくれている間にスタッフさんと色々話しをしまして、その時に私が今回は滑らかさを気にしていることがちょこちょこ出ました。
勿論、勧めてくれたもので書いて納得した買い物なんですが、むしろスタッフさんが心配してくれて(笑)お勧めのペンの新品を(インクを入れない状態ですが)触らせてもらったりしました。


で、再度ちょっと考えることにしました。
すると、まるで呼び水のようにすーっと前者の候補のペンが自分の中に感覚的に蘇ってきました。
ということで、以前にも試し書きした前者のペンに決まりました。


私がスタッフさんにとても有難いと感じるのは、スタッフさんが心配になることです。
それは決して知識がないとかそういう話ではなくて、個人が感じる感覚だからです。
いくらデータ化して数値で明記しても、カメラレンズのように数値では表わせないそれぞれの味があります。
しかも、それは個人個人感じるしかなく、だから滑らかといった時に私が満足いく滑らかさかどうか分からないし、この新品のペンがサンプルと同じ感覚になるかも分からない。


当たり前のことなんですけどね(笑)
でも、そこを改めて気にしてくれることが、私は有難いし嬉しくなります。
人と人が関わるって、そのもどかしさと難しさが横たわってる。
でもそれが、お互い分かってるっていうのは嬉しい。


最後に購入した万年筆で早速、試し書きさせてもらいました。
やっぱり良い!


お店を出た後、良いものが買えたので、ほくほく歩いていました。
と、何故いつものように個性的のもの選ばず、こちらを選んだのか。
何がひっかかっていたのかが、急に分かりました。


それは、今回はずっとモノが私を呼んでくれていたんだと気づきました。
こだわるタイプの私は、モノを私の中の感覚が選ぶ、そんな印象でした。
でも今回は感覚的に随分違って、モノが私に呼びかけてくれたような、お前の助けになるぞと言うかのような。
かなり不思議ちゃんみたいな発言してますけど(笑)
よく、樹や石を扱う職人さんが「素材がこうしろって言いよる」みたいなことを言いますが、ちょっとなるほど。


モノとの関わり合い、出会いの新感覚、世界です。
これは確固たる感覚にしたい!
そう思ってあれやこれや先回りして考えてみましたが、どうも旨くいかないような気がします(笑)
ただ、誠実であること、これは大事な気がしてなりません。

手帳と万年筆(前半)

今日は夕方から強力な台風が接近とのこと。
でも昼間は暑いぐらいの陽気でしたので、バイト後にお気に入りのお店「カキモリ」に行きました。
http://www.kakimori.com/index.html

ここで、私はオリジナルの絵コンテ帳とネタ帳を作りました。
両方とも、大のお気に入りです。
絵コンテ帳はわざと裏表本皮の柔らかいノートにして、中身の紙を自由に抜き差し出来る紐閉じにしました。
撮影のシーンだけ持って行けて、ポケットに差し込む等々、現場で使い易いものにしたかったんですねー。
ネタ帳も裏表本皮の表紙なので、どう育っていくのか楽しみです。


で、今回は万年筆を買いたくて訪ねました。


というのも来年の新しい手帳を買いました。
ですが、こいつが強烈なインパクトの持ち主でして。


ぶらりと入った店で、なんとなく手にしたその手帳は他の手帳とまるっきり違いました。


今時の手帳はまず表紙のデザインやカバー、それから月間スケジュールがあって、見開き一週間やら、二日やら、一日の24時間割だったり等、様々な創意工夫がされてます。
買った手帳は表紙に単色カラーで1〜12までの数字の表記。
中は見開き月間のスケジュールだけ。

その他のページは下側に1〜12まで数字が並んで、その月にあたる数字だけが濃くなってます。
あと空白。
縦横の線も無し。
日付、曜日すら無し。

最初、見方が分からなくて(笑)しばらく固まってました。
そのインパクトと自由さは(不自由?)、私を一発でKOしました。


でも、でもですよ。
いくらそういう不自由さ?に堪らない可愛さを感じる私でも、手帳は毎日付き合うものです。
一年間、疲れ切った心身に、この手帳の日々が耐えられるか、ちょっとだけ不安になりました。

その時です。
脳に閃きました。
それは筆記用具です。

これはお気に入りの筆記用具があれば、困難も乗り越え、更にこの手帳の持つ力を強力に発揮できる!
そう確信したので、勿論高いものは買えませんが、ある程度は出して良いモノを買おうと思い立ちました。

という事で、カキモリに行きました。
なんだかんだで長くなってきたので、後半に続きます。

踊りと粋

今日は色々な都合もあって、編集はお休み。
バイト後、吉祥寺のヨドバシに行き、スタバでちょっと勉強して、すっかり常連の三鷹ボルダリングジムで登りました。


そこで今日は高円寺の阿波踊りという話。
そういえば上京してからはずっと高円寺に近いところに住んでいたのに、一度も観たことがありません。
踊りもお祭りも好きだけど、すっごい人でほぼ観れないと聞いてからはとくに行こうともしませんでした。
なので今日も行く気はなかったんですが、DVDを返却しに三鷹駅の反対側に行くと、何やらお祭りの囃子が…。


今日は高円寺だけじゃなくて三鷹でも阿波踊りだったんですねー。
ちら見する程度のつもりが、人生初の阿波踊り
…座り込んで1時間近く観てしまいました。


お祭りという人を解放させる素敵さはもちろんのことですが、まず驚いたのは実に多様なリズムがあることでした。
林英哲さんの太鼓もそうですが、太鼓は生で伝わる空気の振動がたまりません。
そして、グループそれぞれ色んな構成があって楽しい。
こりゃ踊りたくなります。


ちなみに私はあの阿波踊りの衣装、女性の三角?の細長い笠と着物の衣装がかなり好きなんです。
女性がすらっと細身に見えるし、踊るときはあの下駄は常に爪先しか着かないんですね。
それもあってボディラインが綺麗に見え、かつ色気があります。
しかも踊ると生足が少し見えて、ちょっとどっきりします(笑)
そして腰帯の位置や色の配置も上記の事をよりいっそう際立たせます。
それでもって、あの縦と前の印象が強い踊りの振り付け。
女性の美しさ、色気がいや増しますな。


もとい。あの衣装だけじゃなくて、阿波踊りを構成するための「つくり」。
ある意味「システム」が本当に良く出来ていて楽しい。
それが粋なんだなーと感心してしまいました。


踊りやデザインというのは、ちょっと音楽に近いような気がしてていつもちょっと羨ましくなります。
言語化するより、もっと感情にダイレクトというか。
このダイレクト感ってある意味どうでもいい事として切られてしまう社会ですけど、でもそこにはある意味で社会さえ切り離せる自由さがあると思うんです。

勝手にお父さんだと決めつけてみる

今日は父の日ですね。
久々に覗いた服屋さんでも、雑貨屋さんでも、ヨドバシカメラでもお父さん用の展開です。


そんな今日。
電車の流れる景色の中に、屋上のアンテナを修理してるお父さんを見つけました。
そういえば日曜ですもんね。
蒸し暑いけどガンバです、お父さん。


私の目の前を歩く疲れた背中のお父さん。
白いポロシャツに茶色のチノパン、足元はスーツ用の黒い革靴です。
日曜やからね…と思ったらいきなり、お父さんダッシュです!
それも僅か2秒!
短い!
私と疲れた背中のお父さんの距離はかすかに広がりました。


ジェット・リー主演の昔の映画で、「D&D完全黙秘」という映画があります。
ジェットの映画の中でも屈指に殺陣が良くて私は大好きなんですが、英題は何故か「My father is a hero」
いや、確かに内容には被ってるんですけどね…この邦題と差は…。

そんな父の日。

 

ジローさんの原画

明治大学米沢嘉博記念図書館で行われている「孤独のグルメ谷口ジロー原画展に行ってきました!
ドラマ化されたり、ちょっと流行ってたんですね。
…実は知らなかったんです。


ひょっとしたら私より知らない方の為に補足させていただくと、漫画家さんです。
結構有名な大御所?になると思います。
昔の作品を何本か読んだことがありまして、これでもファンなんですよ…。


もとい!なんといっても一番は「神々の山麓
これは私の漫画フェイバリットの1、2を争う作品です。


以前阿佐ヶ谷に住んでいた頃、近所にレンタル漫画屋さんがあって、何故か気になって借りたのが「神々の山麓」でした。
しかも最終巻。


なーんか、ぶっとんだシーンがいきなりくるなーとか思いながらも、物凄い熱さと重量感、密度に圧倒されてやたらに感動して読み終えました。
やべぇやべぇ、読みきりでこんな面白い漫画があるんやなーと信じこんで、返しにいった時の衝撃が忘れられません。
全五巻です。


私の天然さは置いといて(笑)何が凄いって、その場で一巻から借りなおして読んでも更に面白かったことです。


どちらかというと少年ジャンプ全盛期に育った人間には、静かな大人の漫画です。
しかし、ドラマチックながらも静かに秘められた画は熱いし…ああ言葉ではうまく表せない…というのも私の手元には無いからです。


山登りやクライミングが絡むので、どこのクライミングジムにも「岳」と「孤高の人」と「神々の山麓」はほぼ置いてあるんですが(笑)
近所の三鷹ジムにも「神々の山麓」の文庫本があって、何年ぶりかに一巻を読み返しました。
しかし、冒頭数ページで胸が熱くなって閉じました。
…うーむ、欲しい。文庫だし。これがこの値段なら安いし…お金が出来たら買おう。


ということで文庫を買うつもりが、上記の原画展を見て悩みはじめました。
もともと谷口ジローさんの画は緻密なので、大判が良いという評判もありました。
何年ぶりで見ると文庫本でも十分堪能出来たし…。


しかし、谷口ジローさんの原画ってびっくりするぐらい綺麗なんですね。
ハーフトーンがこんなにも使われてるとは知らなかったです。
濃淡の幅が広く、緻密でとても綺麗です。


大きさもあるでしょうが、印刷ではと白と黒のコントラストが強くなっちゃうんだと初めて知りました。
なるほど大判の方が文庫よりいいかもと痛感です。
孤独のグルメ」は作品としても初めてで、かつ原画で読みましたが(笑)面白かったです。
いやー、腹減りますよ!


展示は思ってたより小さい規模でしたが、満足して出ました。
でも、余韻でそのまま帰る気にもなれず、少し御茶ノ水を歩くことにしました。

御茶ノ水は楽器店が多いイメージでしたが、山岳やスキーのお店もとても多いんですねー。
大通りに大きな店が驚くほど連立してました。
適当に何件かの店に入ってぶらぶら見つつ、まれにあるクライミングシューズを触ったりして楽しみました。