手帳と万年筆(後半)

で、カキモリさんに着きました。
キモリさんはこだわる人にはとても快適なお店だと思います。
万年筆は高価なモノまで、様々な種類の紙に試し書きができます。
ということで、並んでる端から端まで試し書き(笑)


実は一つだけ候補があって来たのですが、いやー、やっぱり良いモノは色々ありますね。
当たり前ですけど、ちゃんと誠意のこもったモノが世の中にはあって、それは幸せな事だなーとつくづく感じ入ってしまいました。


かなり悩みまして、最終的に2本が候補に残りました。
一つはあらかじめ候補だった万年筆で、凄く滑らかで書きやすいものでした。
以前に他の店で試し書きをして、まるでペンが自分の意思より先に字を書いてくれるような、ちょっと不思議な気持ち良さが凄く印象的でした。
それは今回も変わりません。
凄い。


もう一つは立てて書くとかなり細字で、ぐっとねかせて書くと筆ペンぐらい太く書ける個性的な万年筆です。
書く感触はちょっと癖があって、自分の感覚より若干ひっかかって線が引ける印象でした。
でも手帳に様々なラインが引ける楽しさは、とても魅力的です。
それに、ひっかかり等の癖は自分の修練でなんとかなるような気もしますし、そういうじゃじゃ馬はやっぱり好きなんです(笑)。


面白いのは普段の自分なら、多分後者の個性的なペンを選ぶはずなんです。
ただ、なんとなく体のどこかにひっかかるものがあって、かなり迷ってました。
長く使いたいなら書きやすいものですが、個性的なものを長く使ってこなせるというのも非常に魅力的です。
ぼんやりとですが今回は滑らかな書きやすいもの、とささやきを感じたので、その方向に決めました。


するといつも親しくさせていただいているスタッフさんが違うお勧めの万年筆を紹介してくれました。
それは価格も手頃なのに非常に書きやすいものでした。


私がカキモリさんを好きな理由はもう一つあって、スタッフさんが個人対個人で接客してくれることなんです。
勿論、色々な接客があっていいと思いますし、正解なんかなくていいと思いますが…ちょっとややこしいんですが、正解がないってことがいいと思うんです。


というのは、一旦私はそのスタッフさんが進めてくれたペンを買うことに決めました。
商品を準備してくれている間にスタッフさんと色々話しをしまして、その時に私が今回は滑らかさを気にしていることがちょこちょこ出ました。
勿論、勧めてくれたもので書いて納得した買い物なんですが、むしろスタッフさんが心配してくれて(笑)お勧めのペンの新品を(インクを入れない状態ですが)触らせてもらったりしました。


で、再度ちょっと考えることにしました。
すると、まるで呼び水のようにすーっと前者の候補のペンが自分の中に感覚的に蘇ってきました。
ということで、以前にも試し書きした前者のペンに決まりました。


私がスタッフさんにとても有難いと感じるのは、スタッフさんが心配になることです。
それは決して知識がないとかそういう話ではなくて、個人が感じる感覚だからです。
いくらデータ化して数値で明記しても、カメラレンズのように数値では表わせないそれぞれの味があります。
しかも、それは個人個人感じるしかなく、だから滑らかといった時に私が満足いく滑らかさかどうか分からないし、この新品のペンがサンプルと同じ感覚になるかも分からない。


当たり前のことなんですけどね(笑)
でも、そこを改めて気にしてくれることが、私は有難いし嬉しくなります。
人と人が関わるって、そのもどかしさと難しさが横たわってる。
でもそれが、お互い分かってるっていうのは嬉しい。


最後に購入した万年筆で早速、試し書きさせてもらいました。
やっぱり良い!


お店を出た後、良いものが買えたので、ほくほく歩いていました。
と、何故いつものように個性的のもの選ばず、こちらを選んだのか。
何がひっかかっていたのかが、急に分かりました。


それは、今回はずっとモノが私を呼んでくれていたんだと気づきました。
こだわるタイプの私は、モノを私の中の感覚が選ぶ、そんな印象でした。
でも今回は感覚的に随分違って、モノが私に呼びかけてくれたような、お前の助けになるぞと言うかのような。
かなり不思議ちゃんみたいな発言してますけど(笑)
よく、樹や石を扱う職人さんが「素材がこうしろって言いよる」みたいなことを言いますが、ちょっとなるほど。


モノとの関わり合い、出会いの新感覚、世界です。
これは確固たる感覚にしたい!
そう思ってあれやこれや先回りして考えてみましたが、どうも旨くいかないような気がします(笑)
ただ、誠実であること、これは大事な気がしてなりません。